Classici giapponesi con furigana
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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
Leggi 日本婦道記 (にほんふどうき) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 11.170 caratteri · 22 schermate
――もうこの儘では嫁にゆくこともできまい。靱負はそう思った。寧ろ松山へ伴れてゆくほうが、心がおちついて治る望みが出るかも知れない。
これほど思い詰めている気持も哀れだし、今日までの辛労に酬ゆるためにも、多少の不便は忍んで伴れてゆくのが本当だ。
「おかや」と彼は側へいって呼びかけた、
「……いっしょに松山へ行こう、おまえにはずいぶん苦労をかけた、松山へ行って、治ったら新沼から嫁に遣ろう、もし治らなかったら一生新沼の人間になれ、わかるか」
おかやはけらけらと笑った。さっきから抱えたままの荷物を持って、背中に負った牧二郎をあやすかと思えば、いそいそと土間へ下りて、すぐにも出立しようと促すような身振りを繰返すのだった。そのとき戸外は本降りになっていた、空は鉛色の重たげな雲に閉され、黄昏ちかいうら寂しい光のなかを、さあさあと肌寒い音をたてながらかなり強く降りしきっていた。
予定より七日ほど後れて靱負は出立した。おかやを伴れてゆくに就いて、多助には少しも異存はなかった、「ただこんなお役に立たぬ者になり、また遠国のことでなにか有ってもお伺い申すことができません、どうぞ呉ぐれも宜しくおたのみ申します」