Classici giapponesi con furigana
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はやみみさんじとりものききがき
早耳三次捕物聞書
林 不忘
Leggi 早耳三次捕物聞書 (はやみみさんじとりものききがき) di 林 不忘 (はやしふぼう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 5707 caratteri · 12 schermate
突き当りは海。
どぶうり、どぶり――浪の音がしている。急いで追っかけて砂浜へ出ると白衣の女は潮風に吹かれて波打ちぎわに立っている。
おや! 投身かな?
声をかけようか。
しかし、酒徳利と心中というのもおかしいぞ。
もうすこし待ってようすを見てやれ。
こう考えているうちに、和泉屋はすっかり胆を潰してしまった。
着衣のまんま、女が海へはいりだしたのだ。片手に酒の入っている徳利、片手を軽くぶらぶらさせて、着物の裾を引き上げるでもなく、まるで往来をあるくと同じように、女は沖へ向って進みつつある。
遠浅の内海だから寄せる浪は低いがそれでも岸近く砕けて白い飛沫を上げている。浪が来ても、女はべつに跳ねもしない。一歩二歩と次第に深くなって、膝から腰、腹から胸と、女の身体はだんだん水に呑まれてゆく。
磯松の根っこからひそかにこれを窺っている和泉屋こそ、薄っ気味も悪いが気が気でない。この場合、自分の家へ帰るような態度で海の中へ踏み込んで往くこの女の後姿には、実になんともいえない妖異を感ぜざるをえなかったというが、そりゃそうだろう。
一段二段三段――と浪の線を後にして、女はしばらく水上に頭を見せていたが、やがてのことにそれもすっぽり没し去って、完全に海へめいり込んでしまった。