Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

ja-reading.com

Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.

はる

春

宮本 百合子

Leggi 春 (はる) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 3512 caratteri · 8 schermate

Aozora Bunko

「どうしたの、なあに?」

「文鳥が逃げちゃった。そこにいるのに」

成程! 籠の中は一羽だ。つい鉢前の、菊の芽生えの青々とした低いかげにもう一羽が出ている。外にいる方の文鳥は、見違えるほど綺麗に感じられた。瑞々しい、青い、四月の菊の葉に照って、薄桃色の、質のよい貝殼のような嘴、黒天鵞絨のキャップをのせた小さい頭、こまやかな鼠灰色の羽なみが、実に優美だ。鳥は、チチ、チチ、と短く囀りながら、二とび三とび地面を進んで見る。思いがけず翔び出した広い空気をまだ信じられず、子供らしく愛らしく、愕きに満ちているようだ。その感情のあらわれた、不決断な風が一層美しさを添えた。ついその上の軒に吊った、しゃれたサラセン風円屋根つきの籠の中では、のこされた一羽が、外の一羽から目をはなさず、切ない調子でせきこみ、鳴きかけている。チチ、チチュン。外のは内の仲間の鳴声に心牽かれる。さっと水際立った翔び立ちはとても出来ない。チチ。……一寸近よりそうにする。然し、鳥の本性は籠の中より野天の甘美なことを熟知しているに違いない。縁側の手前よりこっちには、決して、決して来ない。チチ、チュ。