Classici giapponesi con furigana
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はる
春
豊島 与志雄
Leggi 春 (はる) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 10.464 caratteri · 21 schermate
或る夜、六人のうちの一人が、ふいに掛布団をはねのけて飛び起きた。
「地震だ。」
その咄嗟の本能的な叫び声に、却ってしいんとなったところへ、どどどど……ぐらり、ときたやつが、ふらりふらりとなって、波の引くように消えてしまった。
ほう、といった気持で、布団から覗き出してるのと起き上ってるのと互に顔を見合った。
「なあーんだ。」
皆こそこそと布団の中にもぐり込んだ。
「誰だい、悲鳴を挙げたのは。……本当にひどいやつが来たら、逃げようたって逃げられやあしない。死なば皆諸共さ。」
だが、力無い声の調子だった。
十二年の大地震に痛んだままの古い建物である。塗り直した壁にもまだ隙間があり、柱は心持ち曲っている。眼に見えない肝心のところ、柱や梁のはゆるんでるに違いない。死なば皆諸共、一度にぐしゃりと潰れるまでである。
言葉が途切れて、どこからか犬の遠吠が聞える。しいんとして蒸暑い。
そのうちに、ひょいと一人が寝台から滑り出て、黙って出て行こうとする。
「おい待てよ、僕も行くから。」
「うむ。」
それきり誰も何とも云わない。二人が便所から戻ってきても、誰も何とも云わない。