Classici giapponesi con furigana
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はるのとうぞく
春の盗賊
Leggi 春の盗賊 (はるのとうぞく) di Dazai Osamu (太宰 治) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 29.212 caratteri · 58 schermate
さりと落ちた。私は、一時、途方にくれた。拾って来た緑の風呂敷は、メリンスで、こまかい穴が二十も三十もあいている。謂わば、薄汚いものである。これをまた、八百屋のまえに捨てに行ってもいいが、再び、よそのおばさんに、あれ風呂敷おとしましたよ、と注意を受けたならば、私は、たちまちその親切を謝し、この穴だらけの風呂敷を拾って家へ帰らなければならぬ。むだなことである。私は、一時、この風呂敷を私の家にあずかって置くことにした。普通一般の、健康な市民でも、やはりこんな立場に在ったときには、私と同じ処置をとるにちがいない。私は、決して盗んだのではない。自分の風呂敷を、ふところ深く押し込みすぎて、それを忘れてしまって、落したものとばかり思い、きょろきょろ捜していたら、よそのおばさんが親切に、教えてくれて、私は、感謝してその風呂敷を拾い、家へ帰って調べてみたら、ちがっていた。それだけの話なのである。罪になるかしら。いいえ、私は決して、この緑の風呂敷を、自分のものだとは思っていない。返却したくても由なく、こうして一時、あずかって在るのである。どんな人の使用していたものか、わからない。