Classici giapponesi con furigana
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しゅんせつ
春雪
久生 十蘭
Leggi 春雪 (しゅんせつ) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 11.672 caratteri · 23 schermate
柚子が仕足らぬことをたくさん残して、死んだことを口惜しく思う一面に、この世の穢れに染まずに、たとえば春の雪のようにも、清くはかなく消えてしまったことに、人知れぬ満足を感じているわけで、池田の気持の中には、柚子の追憶を、永久に美しいままにしておきたいという、ひそかなねがいも、ないわけではない。
感傷といわれれば、そのとおりにちがいないが、柚子の過去の話が、暗いつまらぬことなら、知らずにすますほうがいい。いまになって興ざめなことを聞いて、幻滅を感じるのでは、やりきれないとも思うが、気持がそちらへ曲りこんでしまった以上、聞かずにすましてしまうというわけにもいかない。
「伊沢君さっき、誰かに逢わせたいといっていたが、それは、どういうひとなんだ」
「カナダから来たマダム・チニーというひとだ。五日ばかり前に東京へ着いて、いまこのホテルにいる」
「バイヤーか」
「バイヤーじゃない。息子の墓を見にきたんだそうだ。君の話をしたら、非常に逢いたがっていたから」
伊沢は池田の顔を見ながら、なにか考えていたが、ひとりでうなずくと、
「そうだな、はっきりさせるほうがいいんだろう……チニー夫人というのは、柚子さんのお姑さんになるはずだったひとなんだ」