Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

ja-reading.com

Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.

しゅんせつ

春雪

久生 十蘭

Leggi 春雪 (しゅんせつ) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 11.672 caratteri · 23 schermate

Aozora Bunko

「もう、よせ」

「よすことはない。あんなオペシャに、百合の花なんか抱えて、花嫁面をされちゃ、いい娘を戦争で死なせた親たちの立つ瀬がない。ああいう面構えは、眼鏡でもかけて、女学校で生徒を苛めて居りゃいいんだ」

「おれは、他人が美を成すのを喜ばぬほど小人でもないが、きょうの結婚式に出たら、柚子を、もうすこし生かしておきたかったと、口惜しくなった。あれはあれなりに、花の咲かせようもあったろうと思って、ね」

「結婚式という儀式だけのことなら、柚子さんも、やっていたかも知れないぜ」

「なにを馬鹿な」

「すると、君は、なんの感度もなかったんだな」

「感度って、なんのことだ」

「これはたいしたフェア・プレーだ。柚子さんというのは、どうして、なかなかの才女だったんだな」

伊沢の口調の中に、ひとの心に不安を掻きおこすような意地の悪さがある。なんのことだろうと考えているうちに、柚子が死んでから、日記を読んで感じた、あのわからなさが、またしても気持にひっかかってきた。

終戦の前年、七月の末ごろ、次兄の遺品らしい防暑服にスラックスという恰好で、前ぶれもなしに柚子が丸の内の会社へやってきた。