Classici giapponesi con furigana
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ひるのはなび
昼の花火
山川 方夫
Leggi 昼の花火 (ひるのはなび) di 山川 方夫 (やまかわまさお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 7030 caratteri · 15 schermate
でも、そこには、思いがけぬほどの風が吹いているのか、花の凋むように乱菊の消えた平凡な黄昏の空のなかに、煙は、流れに落ちた一滴の淡墨のように、見えぬ手に急速に掃かれ、滲まされて、たちまち跡形なく溶けていった。
「花火って無意味ね」女は声をたてて笑った。「……まるで、人間の夢だとか野心だとか、希望とかお祈りとかの構造を、そのまま描いて見せてくれているような気がする」
そのビルの下からは、夏の夕暮れの生温い風が、洗濯物の酸い臭気を、絶えず吹き上げてきていた。
「……でも綺麗だ」
と、彼はいった。地方出の彼には、東京の花火を見るのは、それが最初だった。
「結局、濫費の美しさね」
答えながら、女は仰向けた顔を動かさなかった。手巾で気忙しく頬を煽いでいた。
「花火って、なんだか、ほんとに花火みたいなものね。……そうは思わなくて?」
女は、赤いベレをかぶっていた。白い手巾の動きは、どこか蛾の羽搏きに似ていた。そして、そのかげにちらちらとのぞく女のあらわな喉の線は、仰向けた首を支え、何故かいつまでも可笑しそうにひくひくと動いていた。
その線の、やさしい起伏を、彼は美しいと感じた。