Classici giapponesi con furigana
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ばんきく
晩菊
林 芙美子
Leggi 晩菊 (ばんきく) di 林 芙美子 (はやしふみこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 15.998 caratteri · 32 schermate
田部と柴又に行ったあと、終戦直後に、山崎と云う男と一度、柴又へ行った記憶がある。山崎はつい先達胃の手術で死んでしまった。晩夏でむし暑い日の江戸川べりの川甚の薄暗い部屋の景色が浮んで来る。こっとん、こっとん、水揚げをしている自動ポンプの音が耳についていた。カナカナが鳴きたてて、窓べの高い江戸川堤の上を買い出しの自転車が競走のように銀輪を光らせて走っていたものだ。山崎とは二度目のあいびきであったが、女に初心な山崎の若さが、きんにはしみじみと神聖に感じられた。食べ物も豊富だったし、終戦のあとの気の抜けた世相が、案外真空の中にいるように静かだった。帰りは夜で、新小岩へ広い軍道路をバスで戻ったのを覚えている。「あれから、面白い人にめぐりあった?」「私?」「うん……」「面白い人って、貴方以外に何もありませんわ」「嘘つけ!」「あら、どうして? そうじゃないの? こんな私を、誰が相手にするものですか……」「信用しない」「そう……でも、私、これから咲き出すつもり、生きている甲斐にね」「まだ、相当長生きだろうからね」「ええ、長生きをして、ぼろぼろに老いさらばえるまで……」