Classici giapponesi con furigana
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ばんきく
晩菊
林 芙美子
Leggi 晩菊 (ばんきく) di 林 芙美子 (はやしふみこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 15.998 caratteri · 32 schermate
二つの箪笥の中には、五十年かけてつくった着物がぎっしりと這入っているに違いない。昔、ミッシェルとか云った仏蘭西人に贈られた腕環を見せられた事があったけれども、ああした宝石類も持っているに違いない。この家も彼女のものであるにきまっている。唖の女中を置いている女の一人位を殺したところで大した事はあるまいと空想を逞しくしながらも、田部は、この女に思いつめて、戦争最中あいびきを続けていた学生時代の、この思い出が息苦しく生鮮を放って来る。酒の酔いがまわったせいか、眼の前にいるきんのおもかげが自分の皮膚の中に妙にしびれ込んで来る。手を触れる気もないくせに、きんとの昔が量感を持って心に影をつくる。
きんは立って、押入れの中から、田部の学生時代の写真を一枚出して来た。「ほほう、妙なものを持っているンだね」「ええ、すみ子のところにあったのよ。貰って来たの、これ、私と逢う前の頃のね。この頃の貴方って貴公子みたいよ。紺飛白でいいじゃない? 持っていらっしゃいよ。奥さまにお見せになるといいわ。綺麗ね。いやらしい事を云うひとには見えませんね」「こんな時代もあったンだね?」