Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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くらがりのおとまつ

暗がりの乙松

山本 周五郎

Leggi 暗がりの乙松 (くらがりのおとまつ) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 11.992 caratteri · 25 schermate

Aozora Bunko

もしや他へ納い忘れはしなかったか、箪笥の中は? 手文庫は?――しかしどこからも金は出てこなかった。上り框へ来て、ふと気付く板敷に歴々と残る草履の足跡、

「泥棒だ、泥棒が入っただ」

嘉兵衛は嗄れ声で娘のほうへ振返る、「お稲、おめえ家を明けやしなかったか」

「……でも、ほんのちょっくらだに」

「明けたか、家を明けただか、おめえ家を空っぽにしただか、お稲!」

「か、勘忍してくろ父さん、おら、おら、ほんのそこまで茂吉さを送って行っただけだに、ほんのちょっくら――」

「何がちょっくらだ、お稲、おめえ――姉さはじめおらやおっ母あを殺しちまっただぞ」

「お父つぁん」

お稲はわっとそこへ泣崩れた。

野村屋の手代は、このようすをさっきから見やっていたが、やがて一度消した提燈へ灯を入れて起上った。

「お取込みのようですが、約束の物は返していただけますかね」

「ああ野村屋さん……」

嘉兵衛はどかりと坐った、「今お聞きのとおりじゃ、娘を売って拵えた二百両の金を、たった今の間に盗まれてしまいましただ、そちらへお返し申す金どころか、親娘三人――明日から生きる方途さえ失くしてしめえました」

「そりゃあどうも」