Classici giapponesi con furigana
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あらの
曠野
堀 辰雄
Leggi 曠野 (あらの) di 堀 辰雄 (ほりたつお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 10.315 caratteri · 21 schermate
そのなかでは、男だけは以前と変らずに手厚いもてなしを受けてはいた。それはかえって男には心苦しかった。が、女との語らいは深まる一方だったので、男はその女のもとをばもはや離れがたく思うようになっていた。
ところが、或年の冬、中務大輔は俄かに煩いついて亡き人の数に入った。それから引きつづいて女の母もそのあとを追った。女は悲歎のなかに一人きりに取り残されて、全く途方に暮れずにはいられなかった。勿論、男は相変らず夜毎に来て、そういう女をいたわり尽してはくれた。だが、世の中を知らない二人だけでは、すべてのことがいよいよ思うにまかせなくなって来ることは為方がなかった。毎日宮仕に出てゆく男のためにもそれまでのように支度を調えることも出来悪かった。それがことに女には苦しかったけれども、どうすることもその力には及ばなかった。
再び春の立ち返った或夕方、女は端近くにいた夫を前にして、この日頃思いつめていたことを口にする決心が漸っとそのときついたように、こんなことを言い出した。
「わたくし達もこの儘こうして暮らして居りましては、あなた様のおためではないのが漸っとはっきりと分って参りました。