Classici giapponesi con furigana
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みらいのてんさい
未来の天才
豊島 与志雄
Leggi 未来の天才 (みらいのてんさい) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 18.630 caratteri · 38 schermate
それでも、静子の家の門をくぐって、その座敷に通された時、私は初めて、自分が重大な瀬戸際に臨んでることを感じた。身体の筋肉が方々、ぴくぴく震えてきた。いくら落付こうと努めても、益々苛立ってくるばかりだった。
其処へ静子の父が出て来た。私は頭をがんと一つ殴られたような心地がした。一人でに頭が下って、どうしても眼が挙げられなかった。私は膝の上に両の拳を握りしめて、じっと唇を噛んだ。
「木川さんですか。私が静子の父です。」
そういう重々しい声が響いた。私はただ、焦茶の地に鼠色の格子がはいってる座布団と、痩せた膝をくるんでる蚊絣の着物とだけを見た。
暫く重苦しい沈黙が続いた。
「実は、あなたが下すったあの進物について、一寸お尋ねしたいことがあって、お呼びしたのですが……。」
そんな風に云い出されて、私は真赤になってしまった。何とか云いたかったが、言葉が喉につかえて出なかった。
「静子はあなたを未来の天才だと云っていましたが、その自信を持っていられるのですか。」
問いが余りに意外だったので、私は思わず顔を挙げた。半白の長髯に包まれた見覚えのある顔が、私の方を眺めていた。