Classici giapponesi con furigana
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りりょう
李陵・山月記・弟子・名人伝
Leggi 李陵・山月記・弟子・名人伝 (りりょう) di Nakajima Atsushi (中島 敦) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 65.013 caratteri · 129 schermate
隠士は目脂の溜った眼をしょぼつかせながら答えた。
「自己だと? 世界だと? 自己を外にして客観世界など、在ると思うのか。世界とはな、自己が時間と空間との間に投射した幻じゃ。自己が死ねば世界は消滅しますわい。自己が死んでも世界が残るなどとは、俗も俗、はなはだしい謬見じゃ。世界が消えても、正体の判らぬ・この不思議な自己というやつこそ、依然として続くじゃろうよ。」
悟浄が仕えてからちょうど九十日めの朝、数日間続いた猛烈な腹痛と下痢ののちに、この老隠者は、ついに斃れた。かかる醜い下痢と苦しい腹痛とを自分に与えるような客観世界を、自分の死によって抹殺できることを喜びながら……。
悟浄は懇ろにあとをとぶらい、涙とともに、また、新しい旅に上った。
噂によれば、坐忘先生は常に坐禅を組んだまま眠り続け、五十日に一度目を覚まされるだけだという。そして、睡眠中の夢の世界を現実と信じ、たまに目覚めているときは、それを夢と思っておられるそうな。悟浄がこの先生をはるばる尋ね来たとき、やはり先生は睡っておられた。なにしろ流沙河で最も深い谷底で、上からの光もほとんど射して来ない有様ゆえ、悟浄も眼の慣れるまでは見定めにくかったが、やがて、薄暗い底の台の上に結跏趺坐したまま睡っている僧形がぼんやり目前に浮かび上がってきた。