Classici giapponesi con furigana
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いなかがえり
林芙美子随筆集
林 芙美子
Leggi 林芙美子随筆集 (いなかがえり) di 林 芙美子 (はやしふみこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 58.157 caratteri · 118 schermate
武藤邸の白い長い石崖を出はずれると、山の方へ上って行く誰にもそんなに知られていない石の段々がある。実に静かで長い段々なので、私は月のいい夜など、この石の段々へ犬を連れて涼みに行く。昼間見てもいい石の段々だ。
この家へ越して来た頃、駐在にいい巡査氏が居た。もうかなりな年配なひとだが、道で子供たちがキャッチボールかなんぞしていると、自分も青年のようにその中へ這入っていって子供たちに人気を呼んでいた。何か名句を一ツ書いて戴けませんかと、戸籍しらべの折、頼まれたのだが、そのままになって、その巡査氏も何時からかもう変ってしまった。――越して来た頃、石の巻の女でおきみと云う非常に美しい女を女中に使っていた。二十一歳で本を読むことがきらいであったが、眼のキリっとした娘で、髪の毛が実に黒かった。二ヶ月位して里へ帰って行ったが、すぐ地震に見舞われて、生きているのか死んだのか、今だに見当がつかない。この女の姉は芸者をしていた。家に居る間じゅう、きだての優しい娘で帰って行ってからも折にふれては「おきみはどうしたかしら」と私たちの口に出て来た。
いまは十五歳になる信州から来た女中がいる。