Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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りゅうえいひろくかつえぐら

柳営秘録かつえ蔵

国枝 史郎

Leggi 柳営秘録かつえ蔵 (りゅうえいひろくかつえぐら) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 12.933 caratteri · 27 schermate

Aozora Bunko

恋の九分九厘は黄金の前には、脆くも挫けるものであった。しかし、後の一厘の恋は、いわゆる選ばれた恋であって、どんな物にも挫けない。選ばれた人の運命は、大方悲劇に終るものであった。それは浮世の俗流に対して、覚醒の鼓を鳴らすからで、たとえば遠い小亜細亜の、猶太に産れた基督が、大きな真理を説いたため、十字架の犠牲になったように。……で、お杉と三之丞との恋は、選ばれた人の恋であった。反すことの出来ない恋であった。

将軍家斉は風流人、情界の機微に精通した、サッパリとした人物であった。お杉に三之丞がなかったなら、恋さないでは居られなかったろう。

後宮の佳麗三千人、これは支那流の形容詞、しかし家斉将軍には事実五十人の愛妾があった。いずれもソツのない美人揃い、眼を驚かすに足るものがあったが、しかしお杉に比べては、その美しさが及ばなかった。で、家斉は溺愛した。しかるに日を経るにしたがって、家斉はお杉の心の中に、秘密のあることに感付くようになった。相手を愛するということは、相手を占有することであった。愛は完全を要求める点で、ほぼ芸術と同じであった。占有出来ないということは、愛する人の身にとって、堪え難いほどの苦痛であった。