Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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かきのたね

柿の種

寺田 寅彦

Leggi 柿の種 (かきのたね) di 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 70.202 caratteri · 139 schermate

Aozora Bunko

思う。

植物が花を咲かせ実を結ぶ時はやがて枯死する時である。それとこれとは少しわけは違うがどこか似たところもないではない。

いつまでも花を咲かせないで適当に貧乏しながら適当に働く。平凡なようであるが長生きの道はやはりこれ以外にはないようである。(昭和十年十月十一日)

*

夜中にからだじゅうの痛む病気に罹って一晩じゅう安眠ができない。この広い世界のすべての存在が消えてしまって自分のからだの痛みだけが宇宙を占有し大千世界に瀰漫しているような気がしている。夜が明けて繰りあけられた雨戸から空の光が流れ込む。ガラス障子越しに庭の楓や檜のこずえが見え、隣の大きな栗の樹の散り残った葉が朝風にゆれていて、その向こういっぱいに秋晴れの空が広がっている。

そういう時にどうしたわけかわからないが、別に悲しくもなんともないのに涙が眼の中にいっぱいに押し出してくる。

学生時代に、アヘン喫煙者が中毒からくる恐ろしい悪夢のために悩まされていたのが、突然その夢がさめて現実にかえって、片方にいる人間の顔を見た時に、涙が止め度もなく流れたというくだりを読んだ記憶がある。