Classici giapponesi con furigana
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おうとう
桜桃
Leggi 桜桃 (おうとう) di Dazai Osamu (太宰 治) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 4851 caratteri · 10 schermate
これでもう、精一ぱいなのだ。おれだって、凶暴な魔物ではない。妻子を見殺しにして平然、というような「度胸」を持ってはいないのだ。配給や登録の事だって、知らないのではない、知るひまが無いのだ。……父は、そう心の中で呟き、しかし、それを言い出す自信も無く、また、言い出して母から何か切りかえされたら、ぐうの音も出ないような気もして、
「誰か、ひとを雇いなさい」
と、ひとりごとみたいに、わずかに主張してみた次第なのだ。
母も、いったい、無口なほうである。しかし、言うことに、いつも、つめたい自信を持っていた。(この母に限らず、どこの女も、たいていそんなものであるが)
「でも、なかなか、来てくれるひともありませんから」
「捜せば、きっと見つかりますよ。来てくれるひとが無いんじゃ無い、いてくれるひとが無いんじゃないかな?」
「私が、ひとを使うのが下手だとおっしゃるのですか?」
「そんな、……」
父はまた黙した。じつは、そう思っていたのだ。しかし、黙した。
ああ、誰かひとり、雇ってくれたらいい。母が末の子を背負って、用足しに外に出かけると、父はあとの二人の子の世話を見なければならぬ。