Classici giapponesi con furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Leggi 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 112.073 caratteri · 223 schermate
――原田どのの人徳でございますな。
「たしかに一種の人徳だ、それが山小屋にこもると、まるで人間が変ってしまう、おれは出府する途中たち寄って、この眼で二度そのようすを見た」
――いちどは私がお供をいたしました。
「そうだ、隼人もそれをいちど見ている」
――あれは十一月でございましたな。
「猪の腹を裂いていたが」
――二十貫もある大きな猪でございました、原田どのは双肌ぬぎになって、山刀でみごとに腹を裂き、皮を剥ぎ、肩や腿肉を切り取って、半刻と経たぬまに、きれいに拵えてしまわれました。
「隼人は吐きそうな顔をしておったぞ」
――私は半分も見てはいられませんでした。
「おれはよく覚えておる、粉雪まじりの風のなかで、双肌ぬぎになった彼の、筋肉のこりこりした逞しい上半身、日にやけた、髭だらけの顔、それから、炉端で炙り焼にした猪の肉を、歯でかじり取って喰べていた姿を、おれはいまでも、ありありと思いうかべることができる」
――私はあの肉は喰べませんでした。
「あれは正真正銘の山男だ、裸馬に乗って駆けまわり、けものを狩り、けものの肉を食い、藁の中で、熊の毛皮をかぶって寝る、あれが山小屋にこもっているときは相貌まで変る、あれは生れながらの山男だ、どんな山男よりも生っ粋の山男だ、おれはこの眼で二度もそれを見ている」