Classici giapponesi con furigana
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はし
橋
池谷 信三郎
Leggi 橋 (はし) di 池谷 信三郎 (いけたにしんざぶろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 18.108 caratteri · 37 schermate
すると、今度は暗い露路に面した劇場の楽屋口が、その部屋の情景にかぶさってダブってきた。――そこをこっそり出てくるシイカの姿が現れた。ぐでんぐでんに酔払った紳士が、彼女を抱えるようにして自動車に乗せる。車はそのままいずれへともなく暗の中に消えて行く。……
彼の頭がだんだんいらだってきた。ちょうど仮装舞踏会のように、自分と踊っている女が、その無表情な仮面の下で、何を考えているのか。もしそっとその仮面を、いきなり外してみたならば、女の顔の上に、どんな淫蕩な多情が、章魚の肢のように揺れていることか。あるいはまた、どんな純情が、夢を見た赤子の唇のようにも無邪気に、蒼白く浮んでいることか。シイカが橋を渡るまでけっして外したことのない仮面が、仄の明りの中で、薄気味悪い無表情を示して、ほんのりと浮び上っていた。
彼は絶間ない幻聴に襲われた。幻聴の中では、彼の誠意を嗤うシイカの蝙蝠のような笑声を聞いた。かと思うと、何か悶々として彼に訴える、清らかな哀音を耳にした。
蝋涙が彼の心の影を浮べて、この部屋のたった一つの装飾の、銀製の蝋燭立てを伝って、音もなく流れて行った。