Classici giapponesi con furigana
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はるはばしゃにのって
機械・春は馬車に乗って
横光 利一
Leggi 機械・春は馬車に乗って (はるはばしゃにのって) di 横光 利一 (よこみつりいち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 77.492 caratteri · 156 schermate
「良いというと?」
と梶はそのときまた医者に訊(たず)ね返したのも、彼のそう云う表情には、歓喜の情ともいうべき思わず閃(ひら)めく美しいものが発したからだった。
「いや、あそこほど美人の多いところはない。それに日本人のもてること、もてること、もう滅茶苦茶にもてる」
医者はこう特別に強い表現で云ってまだ何か足らぬらしく、深く顎(あご)を胸へつけ、なお思い出の深い感動を顕(あらわ)そうとしかけたところへ、突然他の知人が傍へよって来て、まったく別の話をし始めたので、梶と医者とのハンガリヤに関する話は、そのままに立ち消えになってしまったことがある。
梶は寝ながらも今こそ医者の、顎を胸へ埋めようとした刹那(せつな)の表情を思うと、途中の車窓から見えた群がる真紅のひな罌粟が眼に浮び、あの花の中から何が出て来るのかと、多少の好奇心もまた覚えた。またこの友人の医者とは別の人人たちにも、梶はパリでハンガリヤのことについて尋ねてもみたが、みな同様に、
「あそこは良いということだが」
とただそう云うだけで、行ってみたという日本人は一人もなかった。しかし、日本人がひどくそこでは好かれるということについては誰もが異口同音で、自分も行きたいと洩したことに違いのなかったことも確かだった。