Classici giapponesi con furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Leggi 次郎物語 (じろうものがたり) di 下村 湖人 (しもむらこじん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 146.773 caratteri · 294 schermate
お墓詣りをした時には、葉書ぐらいはきまって出した。また、綴方の時間に「地下に眠る母」を書いて出したのを後悔していたにもかかわらず、お浜には、三重圏のついたその綴方をそのまま送ってやり、教室で先生に朗読してもらったことまで書きそえてやった。
お浜に手紙を書く時の彼の気持は極めて自由だった。彼は、彼自身のことについてはむろんのこと、彼の周囲のことについても、町の本田一家のことについても、彼の知っていることなら、何でも書いていいような気がしていた。もっとも、実際に書いたのは、たいていお浜が喜びそうなことばかりだった。本田のお祖母さんについては、ただ一度だけ、「お祖母さんは、まだ僕をあまり好きでないようだが、僕はもうちっとも困らない。」と書いたきりだった。
これは、しかし、いやなことをつとめて避けようとする彼の心づかいからではなかった。お浜へあてた手紙を書き出すと、彼は、ちょうど甘い果物にでもしゃぶりついているような気になって、自然、不愉快なことを書く気がしなかったのである。
むろん、墓詣りをしたおりの彼の手紙には、母の追憶やら、墓場の光景やら、それに伴う彼自身の感傷やらが、かならず何行かは書きこまれてあった。