Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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わすれえぬひとびと

武蔵野

国木田 独歩

Leggi 武蔵野 (わすれえぬひとびと) di 国木田 独歩 (くにきだどっぽ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 94.018 caratteri · 192 schermate

Aozora Bunko

少女は軒下にて足を停め、今一度青年の方を見たり。

今こそ思い出でぬ、今の少女の顔のよく肖たりというはわが治子なるを。げに治子の姉妹なりと言わんもわれいかでたやすく疑い得べき、ことに最初わが方を振り向きし時のまなざしは治子のと少しも違わず、かの美しき目とかくまでに相肖たる眼を持つ少女のまた世にあらんとは思わざりしに。

されどこれもまたわが心の迷いなるべきか、われ治子を恋うる心の深きがゆえなるべきか。かく思いつづけて青年が手はポケットの中なるある物を握りつめたり、その顔にはしばらく血の上るようなりしが、愚かなると言いし声は低ければ杖もて横の欄打ちし音は強く、足下なる犬は驚きて耳を立てたり。たちまち顔は常の色に復りつ、後をも見ずして静かに街をのぼり往きぬ。

犬はかれに先立ちて街を駆けのぼり早くかなたにありて青年を待てり。登りつむればここは高台の見晴らし広く大空澄み渡る日は遠方の山影鮮やかに、国境を限る山脈林の上を走りて見えつ隠れつす、冬の朝、霜寒きころ、銀の鎖の末は幽なる空に消えゆく雪の峰など、みな青年が心を夢心地に誘いかれが身うちの血わくが常なれど、今日は雲のゆきき早く空と地と一つになりしようにて森も林もおぼろにかすみ秋霧重く立ちこむる野面に立つ案山子の姿もあわれにいずこともなく響く銃の音沈みて聞こゆ。