Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しのぜんご

死の前後

豊島 与志雄

Leggi 死の前後 (しのぜんご) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 17.273 caratteri · 35 schermate

Aozora Bunko

そのうちに腹が空いてきたので、簡単な食事をして、それから別れた。坪井の梟のような眼が、なんだか曇りをおびていた……。

その、何の印象もない頼りない別れかたが、却って蔦子の頭に残った。夕方、おつくりをしてるうちに、それがまた頭に浮んできて、涙ぐましい心地になった。そして夜になっても、どこからもかかってこず一人残っていた。そこへ、おしげが不意に訪れてきたのだった。

「だいじな話ですが……。」

さも秘密らしく、玄関で彼女は蔦子の耳にささやいて、ほかのひとたちが出払ってるがらんとした室の中を、じろりと見渡した。その様子に、蔦子はただならぬものを感じ、ばあやさんにあとをたのんで、おしげを近くの小料理屋の二階に連れていった。

おしげは赤茶けた後れ毛をふるわせ、きつい眼付で、いきなり尋ねかけてきた。

「大連に行くとかいう話は、どうしました。」

その改まった調子に、蔦子はけおされた。笑うことも出来ず、まがおになって、あれはただ一寸したお話で、決してそんなことはしないと誓った。

「それから、」とおしげはなお追及してきた、「あの……わるい人とは、ほんとに別れる決心がつきましたか。