Classici giapponesi con furigana
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ししゃのしょ
死者の書
折口 信夫
Leggi 死者の書 (ししゃのしょ) di 折口 信夫 (おりくちしのぶ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 62.340 caratteri · 126 schermate
だが、おれの耳は聞える。其なのに、目が見えぬ。この耳すら、世間の語を聞き別けなくなって居る。闇の中にばかり瞑って居たおれの目よ。も一度かっといて、現し世のありのままをうつしてくれ、……土竜の目なと、おれに貸しおれ。
声は再、寂かになって行った。独り言する其声は、彼の人の耳にばかり聞えて居るのであろう。丑刻に、静謐の頂上に達した現し世は、其が過ぎると共に、俄かに物音が起る。月の、空を行く音すら聞えそうだった四方の山々の上に、まず木の葉が音もなくうごき出した。次いではるかな谿のながれの色が、白々と見え出す。更に遠く、大和国中の、何処からか起る一番鶏のつくるとき。
暁が来たのである。里々の男は、今、女の家の閨戸から、ひそひそと帰って行くだろう。月は早く傾いたけれど、光りは深夜の色を保っている。午前二時に朝の来る生活に、村びとも、宮びとも忙しいとは思わずに、起きあがる。短い暁の目覚めの後、又、物に倚りかかって、新しい眠りを継ぐのである。
山風は頻りに、吹きおろす。枝・木の葉の相軋めく音が、やむ間なく聞える。だが其も暫らくで、山は元のひっそとしたけしきに還る。唯、すべてが薄暗く、すべてが隈を持ったように、朧ろになって来た。