Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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もうりせんせい

毛利先生

芥川 竜之介

Leggi 毛利先生 (もうりせんせい) di Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 12.383 caratteri · 25 schermate

Aozora Bunko

自分は彼等に囲まれながら、その卓に向っている一人の客の姿に驚かされた。それが、今まで自分の注意に上らなかったのは、恐らく周囲の給仕にまぎれて、無意識にカッフェの厨丁か何かと思いこんでいたからであろう。が、その時、自分が驚いたのは、何もいないと思った客が、いたと云うばかりではない。鏡の中に映っている客の姿が、こちらへは僅に横顔しか見せていないにも関らず、あの駝鳥の卵のような、禿げ頭の恰好と云い、あの古色蒼然としたモオニング・コオトの容子と云い、最後にあの永遠に紫な襟飾の色合いと云い、我毛利先生だと云う事は、一目ですぐに知れたからである。

自分は先生を見ると同時に、先生と自分とを隔てていた七八年の歳月を、咄嗟に頭の中へ思い浮べた。チョイス・リイダアを習っていた中学の組長と、今ここで葉巻の煙を静に鼻から出している自分と――自分にとってその歳月は、決して短かかったとは思われない。が、すべてを押し流す「時」の流も、すでに時代を超越したこの毛利先生ばかりは、如何ともする事が出来なかったからであろうか。現在この夜のカッフェで給仕と卓を分っている先生は、宛然として昔、あの西日もささない教室で読本を教えていた先生である。