Classici giapponesi con furigana
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すいちゅうのかいじん
水中の怪人
山本 周五郎
Leggi 水中の怪人 (すいちゅうのかいじん) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 8922 caratteri · 18 schermate
それは空気をひっ掻くような、またなにか宙にあるものをひきるような、えたいの知れない身ぶりだったと云う。……そして呼吸でも詰るのかと思えるような、ひどくかすれた苦しい声で、
「なんでもいいから早く。桃でも、林檎でもなんでもいいんだ。早くしてくれ」
と荒々しく叫び、びっくりした店員が飾棚の方へ行きかけると、
「ああもう駄目だ。間にあわん」と叫んだまま、くるりと背を向けて走りだした。――店員があっけにとられて見送っていると、その男は道を横切って、河岸の荷揚場の方へ走ってゆく。
――あっ! 川へ落ちる。
と思った店員は、我知らず店をとび出していった。……そして驚くべきことを見た。
その男は荷揚場から川の中へ、ずぶずぶと入っていったのである。まるで水棲動物が水へもぐるように、らくらくと自然に、水のなかへもぐって、そのまま見えなくなった。――見えなくなる刹那、首だけ水のうえに出ていたその男は、ふり返って店員の方へにやっと笑ってみせたそうである。
――河童だ!
と思ってその店員は気絶してしまった。
この話はたちまち四方へひろまった。或者はてんから笑って信じなかったし、或者はその店員をわざわざ訪ねてくわしい話を聞いたり、また別の者は、なにか天災の起る前兆だなどと云った。