Classici giapponesi con furigana
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すいめんにうかんだおんな
水面に浮んだ女
田中 貢太郎
Leggi 水面に浮んだ女 (すいめんにうかんだおんな) di 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 4721 caratteri · 10 schermate
「何人じゃ」
母親の叱りとがめる声がした。平三郎は入口へ立って室の中を見た。室の中では母親が彼の婢と並んで裁縫をしていた。
「その態は何ごとじゃ」
母は平三郎の刀を持って気色ばんでいる態を見た。
「そこにおる婢が、無礼を働きましたから、手討にいたしかけたところが、逃げて来ました。その婢を渡してくだされ、手討にいたします」
「お前は夢でも見たのではないか、婢は宵から、私の傍で針仕事をしておって、どこへも往きはしないよ」
平三郎は眼をっておどろいてこっちを見ている婢と顔を見あわした。今の女はたしかにその婢のようであるが、第一右の首筋をしたたか斬ってあるに拘わらず、傷らしいものも見えない。それに母も傍を離れないと云う、彼は不思議でたまらなかった。彼は気が注いて己の身の周囲を見廻した。
奥の室の隣室には平兵衛の居間があった。母親はその方を見返って襖越しに声をかけた。
「平三郎が、あんなことを云うておりますが、お聞きになりましたか」
嘲るような笑い声がそこに起った。
「若輩者、狸にでも化かされたか」
平三郎は刀を持ったなりにすごすごと離屋の室へ帰って来た。帰りながらも不思議でたまらないから、若党のいる室へ往って将棋をやっていた二人を呼びだした。