Classici giapponesi con furigana
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すいま
水魔
田中 貢太郎
Leggi 水魔 (すいま) di 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 11.727 caratteri · 24 schermate
と、山西は顔馴染の老人の顔を見て云った。
老人は右の棚から壜入の酒をとってその口を開け、それを背後の方へやって、「ほい、お燗だ」と云った。
そこには銅壺を据えた長火鉢があって、これまでついぞ見たことのない小女が坐っていた。
「あいよ」小女は手早く老人の出した壜を執って銅壺の中へ浸けた。
「お肴は何にしましょう」と、老人は長い箸を持ちながら云った。
「烏賊があるなら、烏賊をもらおうか」
「烏賊はおあいにくさま、がんもどきならありますが」
「じゃ、がんもどきと、はんぺんにしてもらおう」
老人が鍋の中からがんもどきとはんぺんを挟んで山西の前へ出し、それから盃も出したところで、もうお燗が出来た。山西は台の上に俯向いて、肴を喫い酒を飲んだが酒はすぐ無くなった。
「お爺さん、酒のかわりだ」
老人は新香をちょきちょき切っていた。彼はちょっと手が放せないので、背後を揮り返るようにして云った。
「……みなわ、お酒のおかわりだ、乃公はちょっと手が放せない、お前が執ってくれ」
みなわ、と云った詞に、山西はびっくりして蒸気の濛濛と立っている鍋越しに小女の方を見た。小女は起って棚の方へ往こうとして、ちらりと客の方を見て笑った。