Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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かごつるべ

江戸情話集

岡本 綺堂

Leggi 江戸情話集 (かごつるべ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 203.779 caratteri · 407 schermate

Aozora Bunko

「治六か。どうしている」

久し振りで主人から優しい声をかけられて、治六は急に悲しくなった。彼は胸がいっぱいになったようで、腰から手拭を取って顔に当てたまま俯向いていた。

「何を泣く。馬鹿野郎」と、次郎左衛門はあざけるように叱りながら起き直った。「だが、貴様が来たので丁度いい。少し頼みたいことがある。国まで使いに行って来てくれ」

ここの亭主からもう聞いたかも知れないが、おれも財布の底をはたき尽くして、宿の払いにも困るような始末になってしまった。もう、うかうかしてはいられない。今度という今度は本気になってなんとか身の振り方を付けなければならない。それには幾らかまとまった金が欲しい。これから故郷の佐野へ行って、姉や親類にもその訳を話して、金の都合をして来てくれ。なんといっても親は泣き寄りで、まさかに情なくも追い返すまい。実は飛脚を頼むつもりできのうから手紙を書いておいたから、これを持って行けば判るといって、彼は蒲団の下から一通の手紙を探り出して治六に渡した。

正直な治六はなんにも疑わなかった。主人としては今の場合こうするよりほかに、知恵も工夫もあるまいと素直に考えた。