Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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かごつるべ

江戸情話集

岡本 綺堂

Leggi 江戸情話集 (かごつるべ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 203.779 caratteri · 407 schermate

Aozora Bunko

しかし、男と永久に手を振り切るというのは、どうしても思い付かないことであった。男の方でも承知する筈がないと綾衣は信じ切っていた。

その望みも危ういものになって来たではないか。考えると彼女も胸が痛んで来た。夕雛の男はいよいよ上方へ発つという前の晩にそっと逢いに来た。二人は泣きたいだけ泣いて別れた。自分も一緒に貰い泣きをしたものの、今夜別れたらもういつ逢われるか知れない男を、無事に見送って帰してやった夕雛の仕方が歯がゆいように思われてならなかった。女も女なら男も男だと、綾衣はひそかにその男の薄情を憎んだ。そうしてまた、ふたりの弱い心を憫れんだ。実際、夕雛は気の弱いおとなしい女であった。その平生の気質から考えると、大事の男をおめおめ手放してしまって、今更とらえようもない昔の夢にあこがれて、毎日泣いているのも無理はないとも思われた。いじらしい夕雛の泣き顔を見れば、綾衣も涙がこぼれた。

しかしあの人と自分とは性根の据え方が違うと、彼女はいつも誇るように考えていた。

どんなに性根を強く据えていても、さすがは人間の悲しさに、綾衣はだんだん薄れてゆく自分のさびしい影を、じっと見つめているのは苦しかった。