Classici giapponesi con furigana
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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
Leggi 江戸情話集 (かごつるべ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 203.779 caratteri · 407 schermate
「実をいうと、佐野のお家はもう駄目だ。とうとう押っ潰れてしまったよ」と、治六は悲しそうな眼をしばたたいた。
亭主はしばらく黙って、旅疲ればかりではないらしい彼の痩せた顔を見つめていた。
「お家が潰れた」と、亭主は呆れたように言った。「いつ、どうして……。この前に見えた時にはちっともそんな話はなかったが……」
「なに、あのときにも内々覚悟はしていたのだが、この秋になって急にばたばたと傾いて来たので……。こうなっちゃあ人間の力で防ぎは付かねえ」
治六はきれいに諦めたらしく言っていた。去年からの主人の放蕩で、佐野で指折りの大家の身上もしだいに痩せて来た。もっとも、これは吉原通いばかりのためではない。ほかに有力な原因があった。侠客肌の次郎左衛門は若いときから博奕場へ入り込んで、旦那旦那と立てられているのを、先代の堅気な次郎左衛門はひどく苦に病んで、たびたび厳しい意見を加えたが、若い次郎左衛門の耳は横に付いているのか縦に付いているのか、ちっともその意見が響かないらしかった。
「百姓の忰めが長いものを指してのさばり歩く。あいつの末は見たくない」
口癖にこう言っていた父は、自分の生きているあいだに、形見分けの始末なども残らず決めておいた。