Classici giapponesi con furigana
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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
Leggi 江戸情話集 (かごつるべ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 203.779 caratteri · 407 schermate
お此もむろん知っていなかった。
お絹がお此を残酷にさいなんで、ようよう聞き出した新しい事実は、以前よりもこの頃はお里の店へ林之助が足近く通って来るというだけのことに過ぎなかったが、それだけのことでもお絹の胸の火をあおるには十分であった。
「お此さん、ありがとうよ」と、お絹はわざと落ち着いたような声で言った。「もうそのほかにお前さんの知っていることはなんにもないんだね」
林之助がどんな着物を着ていたとか、どんな菓子を買って食ったとか、お里にどんな冗談を言ったとか、茶代は幾らぐらい置いたらしいとか、そんなことまで残らずしゃべり尽くしてしまったお此は、もうこの上はおそろしい蛇を頸に巻き付けられても、なんにも口から吐き出す材料はなかった。
「後生ですからもう堪忍して下さい。まったく何んにも知らないんですから」と、お此は手を合わせないばかりにして、自分に詐りのないことを訴えた。
「もういいでしょうよ。姐さん」
お花も見かねて取りなし顔に言った。自分が先き立ちになってお此を責めたのではあるが、蛇責めのむごい拷問には彼女もさすがに驚かされた。
罪のないお此をそれほどに窘めるのも可哀そうだと思ったので、お花も仕舞いには却ってお絹をなだめる役にまわったのである。