Classici giapponesi con furigana
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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
Leggi 江戸情話集 (かごつるべ) di 岡本 綺堂 (おかもときどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 203.779 caratteri · 407 schermate
虎はいつか猫に変って、彼のおそろしい爪も牙も見えなくなってしまった。彼は誰にも叱言一ついわないようになった。彼は薄気味の悪いほどにおとなしくなった。その理由は治六にも判らなかったが、ともかくも吉原がよいを始めてから、主人の性質がこう変ったということだけは容易に想像された。
「まあ、まあ、打っちゃって置け」と、次郎左衛門は子分どもを却ってなだめていた。
自分の縄張りを踏み荒らされても、指をくわえて黙っている次郎左衛門のなまぬるい態度が子分どもの気に入らなかった。かれらは歯がゆく思った。親分を意気地なしと卑しんだ。折角踏みとどまっていた少数の子分もみんな失望して散った。さらでも孤立の次郎左衛門は、いよいよほんとうの一本立ちになってしまった。彼の影はいよいよ寂しくなった。
「いっそ、この方が旦那のためになるかも知れねえ」と、治六はひそかに喜んだ。
縄張りは人に奪られ、子分はみんな散ってしまう。次郎左衛門はもう博奕打ちとしては世間に立てなくなったのである。それをしおに料簡を切り替えて、もとの堅気の百姓に立ちかえれば、本人も家も安泰である。そう祈っているのは治六ばかりでなく、分家の人たちもみんな同じ望みをもっていた。