Classici giapponesi con furigana
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えどげいじゅつろん
江戸芸術論
永井 荷風
Leggi 江戸芸術論 (えどげいじゅつろん) di 永井 荷風 (ながいかふう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 85.130 caratteri · 167 schermate
油画の色には強き意味あり主張ありて能く制作者の精神を示せり。これに反して、もし木板摺の眠気なる色彩中に制作者の精神ありとせば、そは全く専制時代の萎微したる人心の反映のみ。余はかかる暗黒時代の恐怖と悲哀と疲労とを暗示せらるる点において、あたかも娼婦が啜り泣きする忍び音を聞く如き、この裏悲しく頼りなき色調を忘るる事能はざるなり。余は現代の社会に接触して、常に強者の横暴を極むる事を見て義憤する時、飜つてこの頼りなき色彩の美を思ひその中に潜める哀訴の旋律によりて、暗黒なる過去を再現せしむれば、忽ち東洋固有の専制的精神の何たるかを知ると共に、深く正義を云々するの愚なることを悟らずんばあらず。希臘の美術はアポロンを神となしたる国土に発生し、浮世絵は虫けら同然なる町人の手によりて、日当り悪しき横町の借家に制作せられぬ。今や時代は全く変革せられたりと称すれども、要するにそは外観のみ。一度合理の眼を以てその外皮を看破せば武断政治の精神は毫も百年以前と異ることなし。江戸木板画の悲しき色彩が、全く時間の懸隔なく深くわが胸底に浸み入りて常に親密なる囁きを伝ふる所以けだし偶然にあらざるべし。