Classici giapponesi con furigana
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かわはぜ
河沙魚
林 芙美子
Leggi 河沙魚 (かわはぜ) di 林 芙美子 (はやしふみこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 11.653 caratteri · 24 schermate
やがて隆吉が戻って来るという事が少しも不安でなくなり、慰めでさえあるような気がした。早く逢いたいと思った。ラジオで聞く、リバテイ型という船に乗っている、兵隊姿の隆吉のおもかげが浮んで来た。千穂子との、狂った生活も、いまではすっかり落ちつくところへ落ちついている……。だが、何事もひしかくしにして済まされるものではあるまいと思っていた。そう思って来ると、与平はずしんと水底に落ちこむような孤独な気持ちになって来た。酒のせいか、さっきほど、思いつめた気持ちにはなれなかったが、もう少し、呼んでくれる千穂子の声がしなかったら、あの風の中に、河へはいったまま与平はそのまま網と共に、自分も流される気でいたのだ。
水の中へ少しずつはいってゆくと、寒さもかえって判らなかったし、水の上は菱波立っていながら、水の底は森々とゆるく流れてなまぬるかった。くいなのような鳥の声が、ぎゃあと遠くに聞えているのも耳についていた。与平は一歩ずつゆるく川底にはいってゆきながら、眼をすえて水の上を眺めていた。石油色のすさびた水の色が、黄昏のなかに少しずつ色を暗く染めていった。水しぶきが冷たかった。