Classici giapponesi con furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Leggi 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 178.609 caratteri · 362 schermate
「稀にはさ」
と、ぬすむように笑った。
百もすぐ、風呂にはいって――あがって、
「なんだか、こう二人きりになると、夫婦みてえで、間がわるいな」
「いいじゃないの、どっち途……。百さん、飲む?」
と、膳の下へ、手を入れながら、ニッと笑った。
「酒か。――酒は」
と、百は、眼をうごかして、あたまへ、手をやった。
「飲んだことないのかえ」
「あるにゃ、あるけれど、おっ母が、酒だけは、ひどく嫌がるんだ。だから家では……」
「きょうは、お留守だから」
百は、飲まないうちに、赤くなった。年は、お稲のほうが、三つぐらい上らしいが、まるで十もちがう姉みたいな気がされるのだった。
野百合の香いが、どこからか忍んでくる。夕月にぬれた草の色は、灯をつけずにいた家の中へ、ちょうどよい加減な明るさをただよわせている。ほんのりと酔ったお稲の白粉が石楠花の花みたいに、ぼっと浮いて。
かの女は、楽しそうに、杯をなめた。子どもの事などは、もう忘れているようなお稲だった。ただ百は、狭山に泊った老母と、叔父貴の夜話が、時々、心のすみで、気にかかった。
「ああ、田舎は、のん気でいいことね」
お稲は、くずした膝のあいだから、水色のみだれを見せて、