Classici giapponesi con furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Leggi 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 178.609 caratteri · 362 schermate
息を引きとるような鶏の声がして、けたたましい羽搏きが裏口を掠めたと思うと、そこから、口を結んだ慎吾の血相が、おそろしい勢いで屋内へ飛び込んで来た。
「あっ」
七は、お芳の上へ重なって倒れた。起とうとすると、またすぐに蹴とばされた。四度ほど鞠のように蹴転がされて、太陽の直射を浴びると同時に、彼は、草ぼこりと一緒に、猛然と大地に両足を踏ンばった。
「慎吾だな、てめえは」
「慎吾だ」
「なんでこのおれを蹴った」
「なんで、お芳どのを蹴った」
蒼白にひっつれた顔と、迫力にふるえる拳が、闘鶏のように睨め寄って、陰惨な呼吸を数え合った。
「蹴ろうと撲ろうと、よけいなおせっかいだ。おれの女をおれが蹴るにふしぎはねえ」
「おれの女?」
「うム、立派にいおう、お芳はおれの女だ」
七は憚らなかった。
眉をビリビリさせていた慎吾は、相手が敢然とさけんだ事実に、ほとんど血の気を失いかけながら、
「これやおかしい、兵助殿が戸狩の七に娘をやったという話は聞いたことがない」
「何が何でも、お芳は、おれの女にちげえねえんだ」
「ばかを申せ。お芳どのは、父親の許しもあり、また、本人もかたく拙者と誓っておるのだ」