Classici giapponesi con furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Leggi 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 178.609 caratteri · 362 schermate
座敷の中へ眸を落して、雲霧はにたりと、
「ほ、豪勢な……。盗ッ人は、眼が眩みそうだ」
権内は、火の出たように、慌て出した。金を両手で掻き集め、座蒲団をかぶせて、その上へ、坐りこんだ。
そして、ぶるぶると硬ばった全身に、虚勢を張って「うぬか、一昨年の泥棒は。味をしめて、また来たのだろうが、そうは、いつも柳の下に、鰌はいねえぞ。このすぐ前に、新しく、自身番が出来たのを知らねえか。一文でもこの金に、手をつけてみやがれ、大声で、番太を呼んで、ふん縛ってくれるから」
「ははは、父っさん、騒ぎなさんな。今夜の用事は、金じゃねえ。俺ア、改めて、詫びをしに来たんだ」
「詫びを――。だ、だれに」
「おめえの娘に。それから父なし子に」
と、閾の外へ、片膝を折って、
「――一目、会わして、もらいてえ」
「ならねえッ」
と、権内は、彼の姿から弱い影を見つけ出すと、急に血相を、猛らして、
「太々しい亡者野郎め、白ばッくれた面をして会わせてくれたあ、何てえ図々しい犬畜生。やい野良犬、よく聞け。てめえのために、娘は傷ものにされるし、大事な持参金の聟は破談になるし、産後の病気で医者にゃあ金がかかる。