Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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かいひんいちじつ

海浜一日

宮本 百合子

Leggi 海浜一日 (かいひんいちじつ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 3953 caratteri · 8 schermate

Aozora Bunko

父は風呂敷包みを下げている。中に鶏肉が入っていた。歩くにつれて包みを振る手が前、後、前、後。それにつれて斑犬もひょいと駈け、鼻面を引こめ、またひょいと駈け跟いて来る。佐和子がおかしがって、

「やあ父様についちゃった、かぎつけた」と囃した。

「ほんと! ほんと! お父ちゃまについちゃった!」

父が振かえった拍子に、犬の鼻へ包が擦りついた。犬は、砂をとばして素速く数歩逃げた。父は、ひどくびっくりしたらしく、娘達が思い設けぬ真面目な声で、

「ゲッタアウエー! シッ! シッ!」

と犬を叱った。娘達は傍で笑って見ている。斑犬は、その二つの笑顔を眺めているから、父の嚇しを本気にしないらしかった。だんだん、彼も遊ぶ気になったと感違いさえしたらしく見えた。千切れそうに益々尾を振り、父が追うのを断念して歩き出すと、忽ちくっついて来る。佐和子はふざけて言った。

「お父様、毛皮の外套なんか召すからこの犬、同類だと思うのよ」と、その間にも、父は時々、

「シッ! シッ!」

と言ったり、砂を抓んで投げつける振りをしたりする。何か本気で不安を感じているらしいのが佐和子に分った。父は、元から犬など嫌いな人であったのだろうか?