Classici giapponesi con furigana
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りんらくのこうじょのおぼえがき
淪落の皇女の覚書
久生 十蘭
Leggi 淪落の皇女の覚書 (りんらくのこうじょのおぼえがき) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 28.649 caratteri · 56 schermate
アレクサンダア三世の後をついで王座にのぼったのは、栗色の髪と灰緑のメランコリックな眼をもった脾弱そうな皇帝で、貴族の特権ともいうべき遊蕩に際しては、道徳堅固といわざるも、心から享楽に沈湎し得ないやつらしいと一般がすぐ見てとった。重大な会談でも阿呆のような緩怠さで聞き流すか、眼を伏せて黙りこんでいる小心らしい陰気な人物で、教養はあるが聡明というほうではなく、見かけになにか滑稽なところがあり、威厳というものがまるでない。ときにはしゃべることもあるが、言葉が舌の端でもつれ、面白くはあったが聞きとれないことが多かった。
ニコラス二世(ニコライ・アレクサンドロウィッチ)の幼年時代は厳格な教育の中で終った。勉強の監視人は丁抹王シャルル九世の皇女ドグマール(ヴィクトリア女王の孫)だった母のマリア・フェオドロオウナそれ自身で、四六時中、ひとときも眼を離さぬような手きびしい躾を受けたうえ、父の武断的な練成が加わるというわけで、疲労困憊のすえ、脅えきってオドオドし、なにかやればかならずみじめな失策をした。
「なんという道化者なんだ、こいつは」
失策を叱責するときのこれがアレクサンダア三世のきまり文句だった。