Classici giapponesi con furigana
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せいひんのしょ
清貧の書
林 芙美子
Leggi 清貧の書 (せいひんのしょ) di 林 芙美子 (はやしふみこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 18.061 caratteri · 36 schermate
与一は沈黙って、一生懸命赤い鼻の先を擦っていた。「この女は旅行に出ても、色々と世話を焼きたがる女に違いない。前の生活で質屋の使いや、借金の断りや、家賃の掛引なんぞには並々ならぬ苦労を積んで来たのであろう」与一はそんな事でも考えていたらしく、ズシンと壁に背を凭せかけて言った。
「僕はとてもロマンチストなんだからね、だが、君のどんなところに僕は惹かされたンだろう……」
そうむきになって云われると、私はまた泪ぐまずにはいられなかった。「またこの男も私から逃げて行くのだろうか」男心と云うものは、随分と骨の折れるものだ。別れた二人の男達も、あれでもない、これでもないと云って、金があると埒もなく自分だけで浪費してしまって、食えなくなるとそのウップンを私の体を打擲する事で誤魔化していた。
「ねえ、私のような女は、そんなに惹かされない部類の女なの? だって夫婦ですものね、それに、私は誰からも金を送ってもらう当はないし……」
与一は二寸ばかりの黄色い蝋燭を釘箱の中から探し出すと、灯をつけて台所のある部屋の方へ疳性らしく歩いて行った。真中の暗い部屋に取り残された私は、仕方なく濡れた畳に腹這って、袖で瞼をおおい、「私だってロマンチストなのよう」