Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ぼうふううにおわったいちにち

清風荘事件 他8編

松本 泰

Leggi 清風荘事件 他8編 (ぼうふううにおわったいちにち) di 松本 泰 (まつもとたい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 20.532 caratteri · 43 schermate

Aozora Bunko

「いい機嫌だな」

宝沢は笑いながら戸外へ出てしまった。

それからまた数年経った。伊東が二度目にヨーロッパの旅に行った帰途、上海の河岸の公園を伊東と宝沢は肩を並べて歩いていた。伊東の紺サージの洋服にはミッドランドの若葉の匂いが寂しく染み込んでいた。彼の帰っていく東京の家には、年老いた父が病床で彼を待ち侘びていた。宝沢は麗らかな日光を全身に浴び、短い脚で伊東に遅れずにどしどし歩きながら、自分のやっている輸出入の商売がとんとん拍子に運んでゆくこと、横浜に近々支店を持つ計画などを語った。

それからの宝沢と伊東とは、少なくも一年に二、三度は会っていた。――横浜に支店を持った宝沢――妻帯した彼――直一と名づけた子供――彼の酒癖――彼の撞球――彼の猟銃。

最近の宝沢はこの世界的不況にすっかり商売をしくじって、本店も支店も閉鎖して、無理な借金の中に苦闘しているとか伊東は聞いていた。

「おや、電灯が点かないのでございますか」

女中の声に初めて我に返った伊東は、弾かれたようにバルコニーへ飛び出した。海は真っ暗で、いつか大粒の雨がスレートの屋根に重い音を立てている。

「おい、宝沢さんはまだ来ないか」