Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しぶやけのしそ

渋谷家の始祖

宮本 百合子

Leggi 渋谷家の始祖 (しぶやけのしそ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 68.023 caratteri · 133 schermate

Aozora Bunko

「真田君――あの、真田猛君ですか、あの人が行くのですか?」

という反問が、殆ど無自覚の裡に、正隆の口を突いて出た。

「ええそうです、あの真田君です」

然し、彼の老眼の前で、俄にサッと血の気を失った正隆の顔を見ると、何でもないという風だった課長は、急に言葉をついだ。

「それあ、君もここまでやって残念でしょう。それは私も察しる。が、なにしろ、場合が場合だから、今度は、真田君に譲ってやり給え。まだ君なんか若いんだから、先が緩(ゆっく)りしている。あわてないでも好いでしょう。それに君は、家庭もよし、歴(れっき)とした――」

課長は、ここで何故か一寸厭な顔をした。

「兄(あに)さんも持っているのだから――」

「家庭が好い? 兄貴がある? 何を云うのか、それとこれとは、全然異った問題ではないか、そんなことで、左右されることではないのだ。途方もない、何を感違いしているのだ。驢馬!」

正隆は、唇を噛みながら、いまいましげに、額を逆に撫で上げて、ジロリと平気に見える老人の顔を睨み据えた。

然し――。

正隆は、第一、何故自分が除(は)ねられて、あんな真田が選ばれたのか、その理由を知らないでは納得出来ない心持がした。