Classici giapponesi con furigana
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しぶやけのしそ
渋谷家の始祖
宮本 百合子
Leggi 渋谷家の始祖 (しぶやけのしそ) di 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 68.023 caratteri · 133 schermate
「フム!」
卓子の上のものを、ガラガラと肱で片寄せながら、正隆は真蒼な顔を頬杖に支えた。
「フム! また始めやがった……」
何を始めたのか? 奸策である。彼の一生をめちゃにする悪計である。記憶の奥に埋れて、殆ど忘れかけていたK県でのことが、悪運の眼のように、彼の眼前で輝き出したのである。正隆は、自分の、最初の首途(かどで)を悲惨なものにさせた、何か恐るべき凶徴が、今もなお、執念深く自分の身を離れずに付いて歩いて来ていたのを思わずにはいられなくなった。
永劫である。永久である。命の、限りである。命の限り、自分の生きている間中は、この、恐ろしい呪咀が付いて廻って自分の行手を遮るのだろう。
副島氏、生徒、垣内を使った怨念は、今は多くの先輩と、真田とを掴んでいるのだ。いつも、相手は多い、いつも、多い。それだのに、自分は独りではないか。到底敵う筈はない。頭を出すとは擲(なぐ)り、頭を出すとは擲りつけて――。今日でも自分が縊れ死ねば、凱歌を奏して、死骸の廻りを踊るだろう。
皆が、死ねばいいと思っているのだ。皆が、首でも吊ればいい、まだ死なないか、まだこれでもかと、虐(いじ)めるのだ、何故? 分っているじゃないか、皆は俺が怖いからだ。