Classici giapponesi con furigana
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たにさんだい
渓三題
木暮 理太郎
Leggi 渓三題 (たにさんだい) di 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 6066 caratteri · 12 schermate
最奥の部落を離れて間もなく水際に大きな葉を拡げた大木の梢に、白い花の簇り咲くのを見るであろう。それは一抱も二抱もある橡や朴の木だ。近くには何かの木に絡み付いた藤が、紫の花を房のように垂れ、上越の山地であると、谷卯木の紅花が水に映っている。山鳩や郭公の物静な鳴声がおちこちに聞えるのもこのあたりである。傾斜の緩い河沿いの段丘を辿って行くと、落葉松の若芽が浅緑に萌え、青葉を背景とした白樺の白い幹は益々白い。春蝉らしいものが鳴き出した、河鹿の声に似ているが更に細く幽で、透き徹るようにほがらかだ、森の精が歌っているのではなかろうか。いつか燕万年青の白い花が路傍に咲いている林に出る。深い椈の純林である。林の奥では蝦夷春蝉が雨の降り灑ぐように鳴いている。初夏の強烈な日光も青葉若葉の蔭に吸い込まれて、地面まではとどかない。陰湿な気がうら淋しくあたりを罩めている。米栂などの針葉樹が混って来ると、岩ウチワの薄桃色の上品な花が見られるようになる。曙躑躅や石楠の色鮮な紅花が綾に咲き乱れているのもこのあたりである。谷の空では時鳥が頻りに鳴く。河が少し開けて磧に下り立つと、水の流れた跡が箒で掃いたように残っている砂地には、鹿や羚羊の足跡が無数に印せられている。