Classici giapponesi con furigana
ja-reading.com
Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.
うずまけるからすのむれ
渦巻ける烏の群
黒島 伝治
Leggi 渦巻ける烏の群 (うずまけるからすのむれ) di 黒島 伝治 (くろしまでんじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 17.240 caratteri · 35 schermate
彼は、朗らかな、張りのある声で、「いらっしゃい、どうぞ!」と女から呼びかけられたこともなかった。
若しそれが恋とよばれるならば、彼の恋は不如意な恋だった。彼は、丘を登りしなに、必ず、パンか、乾麺麭か、砂糖かを新聞紙に包んで持っていた。それは兵卒に配給すべきものの一部をこっそり取っておいたものだった。彼は、それを持って丘を登り、そして丘を向うへ下った。
三十分ほどたつと、彼は手ぶらで、悄然と反対の方から丘を登り、それから、兵営へ丘を下って帰って来た。ほかの者たちは、まだ、ペーチカを焚いている暖かい部屋で、胸をときめかしている時分だった。
「ああ、もうこれでやめよう!」彼は、ぐったり雪の上にへたばりそうだった。「あほらしい。」
丘のふもとに、雪に埋れた広い街道がある。雪は橇や靴に踏みつけられて、固く凍っている。そこへ行くまでに、聯隊の鉄条網が張りめぐらされてあった。彼は、毎晩、その下をくぐりぬけ、氷で辷りそうな道を横切って、ある窓の下に立ったのであった。
「ガーリヤ!」
彼は、指先で、窓硝子をコツコツ叩いた。肺臓まで凍りつきそうな寒い風が吹きぬけて行った。