Classici giapponesi con furigana
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こすいとかれら
湖水と彼等
豊島 与志雄
Leggi 湖水と彼等 (こすいとかれら) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 12.351 caratteri · 25 schermate
湖水の面がきらきらとその光りを刻んでいる。舟は夢のように浮んでいた。青年は櫂をすてて女と並んで坐った。彼等は小さい板片を手にしている。そして各舷側から水の中にそれを浸して、時々は当度もなく舟を動かしているらしい。
彼女は無心に小石を一つ拾って水中に投じてみた。その小さい音が青空の下に消えてゆく時、彼女の静かな悦びがゆらゆらと揺いだ。凡てのものの母であるというような広い心は、また只在ることの静かなる悦びは、渚に戯るる小さい漣の音にも融けてゆく。生きることから解放されたような安易と、彼方の空から来る愁とのうちに、彼女は神を想った。
やがて彼女は立ち上って家の方へ歩いた。頭が自然に力なく垂れた。その時彼女は旧友のなつかしい名を誰彼と思い浮べていた。そして家に入るとその一人に久々の音信を送ろうとて筆を執った。
山に囲まれた盆地は暮るるに早かった。山懐の森の中から夜がひそやかに忍び出た。湖水に映った空の光りが薄れて、只一面に茫然たる灰色のうちに物の輪廓が包まれた。そして月が仄白く空に懸った。
燈火をつけてから、彼女の心は不安を感じてきた。不安はそのまま緊張して神秘な形を取った。