Classici giapponesi con furigana
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こはん
湖畔
久生 十蘭
Leggi 湖畔 (こはん) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 24.180 caratteri · 47 schermate
俺にとって顔のことを言われるほど不快なことはない。思わず厳しく眉を顰めて、
「何故だ、なぜそんなことをきく」
と詰るようにきめつけたが、少女は俺の語気に気付かぬ風で、
「宿では、戦争でお受けなさッた負傷だろうと言ッていますわ。華族様が戦争に行って弾丸にあたるというのは、たいしたことだと言っていましてヨ」
と改めて繁々と俺の顔を眺めた。子供らしい好奇心から、只々、事実のところを聞知りたいというので、俺の顔を見ながら一心に返事を待っている。俺は咄嗟になんと答えようもなく、
「左様サ、威海衛砲台の攻撃で、敵の砲弾にやられたのだ。醜いか、よッぽど怖らしいだろう」
と冗談にしてハグラかすと、少女は気を入れた真顔で、
「恐ろしいことなどありますものか、凛々しくて、お立派にさえ見えますわ」
と仔細らしく頷いてみせた。
少女は俺の面相を別になンだとも思ってはおらぬ。俺にとっては実に望外なことで、久しい間、心の中に蟠ッていた鬱懐が一時に晴れあがるような気がした。生涯を通じて、この時ほど天空海濶な思いをしたことがない。率直な男だったら、少女の手をとって押戴いたこッたろうが、なにしろ因果な気性なもンだから、むしろ毒々しい口調で、