Classici giapponesi con furigana
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こはん
湖畔
久生 十蘭
Leggi 湖畔 (こはん) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 24.180 caratteri · 47 schermate
お手討も時代めいて些か烏滸だが、そうでもするほか、面目を保つ方法がない。そんなことを考えているうちに、自己的な才覚ばかりが発達して、どうでもやるほかはないという方へ気持が傾いた。
正直なところを言えば、本当の俺の気持はその時別な方へ働いていた。姦通の現場を見たときは、なるほど激発もしたろうが、陶があんな不埓を働いたについては、そうなるように押しやったこの俺にも、罪の半分はあることを承知している。俺は子供のときから失望することに馴れているし、陶の愛情などは最初から期待していなかったから矢張りそうだッたのかと思うだけで、腹も立たず、況んや、殺したいほどに憎む気にはなれぬ。ああした現況を俺一人だけが見、外に誰も知らぬという絶対の安心があったら、不心得を諭すくらいのところですましていたろう。
こうしてみると、俺という男は、どれほど卑怯で残酷で、且つ利己的な人間かということがわかる。名聞のため、自己一身の体面を保つために、憎んでもいぬ妻を殺そうという。人間は一銭のためにもよく人を殺す、その所行は残忍であろうも、俺の場合ほど卑劣ではなかろうと思われる。俺の心意は激情から醒め、既に冷理にかえっているのであるから、こういう気持では手にかけにくいが、絶体絶命の羽目だから、思い切ってやるほかはなかろうなどと考えている時、庭先